【まちなかストーリー】ティルナノーグ 大石世志子さん 第3回「浜松という街の魅力とビアハウスの将来について」

まちなかで活躍する人にスポットを当てて、そのヒトの街に対する想いや物語を紹介する「マチナカストーリー」。
前回の懐石料理「いっ木」 一木さんから紹介いただき、4人目はビアハウス「ティルナノーグ」 の大石さん。全3回に分けて、毎週お届けしていきます。

今週は最終回、「浜松という街の魅力とビアハウスの将来について」を中心にお話していただきました。

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人物紹介


大石 世志子
さん
未経験からビアハウス「ティルナノーグ」を開業。沼津で知り合ったベアード・ブライアンさんのベアードブルーイング社で作られる「ベアードビール」を浜松で唯一専門に扱うビアハウスで、ブルワリーから直送される樽生のベアードビールがいただける。飲む側専門だった経験を存分に活かしたお店づくりで、常連さんも多く店内の雰囲気がとても良い。

店舗のWebサイト→ ビアハウス「ティルナノーグ」(浜松市中区田町329-8)

県内屈指の魅力的な街、浜松

大石 県内を転々としてましたけれども、そもそも浜松は魅力的な街だと思いますよ。

伊藤 県内だとどこがいいですか?

大石 三島か浜松!…あー、御殿場もよかったなぁ。三島は東海道筋の宿場街で、水がきれいです。あとは、清水町ですかね。国1のバイパスがビュンッビュン走っている道路の脇で柿田川の源泉がバンバン湧いてます。すごいですよ。

浜松は、よそ者を受け入れてくれるのがいいと思います。静岡のほうが閉鎖的です。なので浜松の方が、他所から来ても入りやすいというか、溶け込みやすいですね。

あとは浜松の良いところは、空が広い!中心の近くに山がない。そのかわりに人口が分散してしまっているってのもあるんでしょうけど、山がこの周辺だと北の方の春野のほうにいかないとないじゃないですか。だから空がすごく広いです。だから街が明るいですね。

鳥居 それはあまり深く考えたことがなかったですね。北には山があり南には海があると言うのがもう当たり前だと思っていました。

伊藤 そうだよね(笑)それはやっぱり、色んなところに住んでいらっしゃると感じるんでしょうね。

大石 そうなんですよ。その代わり東部の方は山が迫っている分、空が狭いし天候もよく変わりますけど、緑が多くて目にすっごく優しい!浜松は、明るいけど冬は乾燥してるしお肌に優しくないですよね(笑)でもね、風はどこでも強かったですよ。御殿場も富士山から箱根に風が通るし、沼津も海風が吹きますから、風は結構どこでも強いです。

でもやっぱり、人は浜松が一番いいんじゃないかと思います。「あたたかみ」があるというか、「まあまあ一緒にやろうぜ」みたいな感じでよそ者でもうまく入れてくれる空気があります。

伊藤 ここに初めて出てきて、周りのお店とかお付き合いとか連携とかあったりしますか?

大石 もうすっごい良い方たちばっかりで、ほんっとにもうお世話になりっぱなしです!

伊藤 ここに来たときにはもう、いっきさんは開業してらしたんでしたっけ?

大石 はい、もういっきさんいらっしゃいましたね。第一通り周辺をはじめ、本当にみんな良い方ばっかりです。

私なんかもう、未経験で何も知らなかったので、一から十まで全部周りの人に教わっていました!本当に知らないんだもん(笑)

鳥居 (笑)でも、聞ける環境があるってとってもいいことですよね!

大石 だってもう、調べてもよくわかんないことは聞くのが一番だと思っています。なのでなんでも聞いてしまいます。で、みなさんなんでも教えてくれます。何度も言っちゃってますが、本当にみんな良い方ばっかりです!

ここの通り(第一通り)って、月に一度、第一月曜日の朝にみんなでお掃除するんですよ。隣の神谷さんがいろいろお世話してくださって、みんなでゴシゴシと歩道を洗うんです。そこでみんな顔合わせしたり世間話したりしますね。

伊藤 でもやっぱりそういうのって大事ですよね。地域の人が一堂に会する機会というか。僕らも、エコ街クラブと言って、まちなかに事業所がある会社さんとかにお声がけをして、月に1回、第二火曜日に清掃活動をしています。それで、清掃活動すると言って声掛けをするんですけど、連絡用に回覧板があるんです。その回覧板にみんなの配布物を挟んで入れてあげて、毎月清掃ついでに回覧板のチラシを入れ替えに来たりして情報交換したりしてますね。

直接話をすることはなかなかないんですけど、顔が見えるだけでもなんか安心しますよね。親近感が湧くというか。全く知らない人ではなくなる安心感。

伊藤 ここは、どこの商店会になるんでしょう?

大石 「第一通り発展会」です。目の前のここの通りが第一通りですね。第一通り本当に短いんですよ。マビーセブンのところからここまでなので。

伊藤 いろいろ入れ替わるところもあれば、ずっと続いているところもありますよね。

大石 続いているところ多いですね、神谷さん(神谷ふぐ料理店 浜松市中区田町329−8)とか稲作さん(居酒屋の稲作さん 浜松市中区田町329-9)とか。

神谷ふぐ料理店 浜松市中区田町329−8 http://www.k3.dion.ne.jp/~kamiya29/

居酒屋の稲作さん 浜松市中区田町329-9 (Webサイトなし)

昔と今とではあまり客層の変化がないビアハウスの経営

伊藤 ここ数年のお店の経営はどうですか?数年前までの不景気などはあったと思いますがそこら辺の変動とか何か特徴があれば聞きたいです。

大石 おかげさまで、うまくやれています。売上の変化で言うと面白いのは、月毎の変動はあるんですけど、それを年単位で見てみると上がる月と下がる月がおおよそ連動していて、1年間の波自体は毎年そんなに大きく変わらないなーと思っています。

伊藤 客層の変化とかは昔と比べてありますか?

大石 うちはあんまり変わらないですね。最近はクラフトビールが有名になったというか人気になったので、出張に来られた方が浜松で飲めるクラフトビールを探して来てくれたりしますね。名古屋、東京の方が多いですかね。

あとは、外国の方はこういう形式に慣れているので、おそらく浜松の中では海外のお客さんは多い方なのかなーと思います。

鳥居 アイリッシュパブ系は他にあまりないですもんね。ネルソンさんくらいですか。

大石 それと、今新しく新浜松駅近くに「シンノスケ・オー」というビールが飲めるお店がありますね。私もしんのすけくんも、あとお客さんもよく行ったり来たりして飲んでるので交流がありますよ(笑)

シンノスケ・オー浜松店 クラフトビールと古本、時々アート https://www.facebook.com/hamamatsu.shinnosuke

浜松市中区 鍛冶町1-43 2F

鳥居 クラフトビール屋さんって良くて、かぶらないし仲いいですよね。

大石 そうですね、クラフトビールのお店ってブルワーたちもとっても仲がいいんですよ。なのでベアードなんかでも、あそこの人が来たこっちの人が来た、あそこに行ったここに行ったという話はよく聞きます。結構仲良く行ったり来たりしていて、クラフトビール業界の人たちってみんな仲良しだなと、それで一緒にコラボとかも良くしていますしね。そういう意味ではいい業界だなと思いますね。

あとは、ブルワー達もやめたりすると、他のブルワリーに入ったり、やめた子が新しいブルワリーを立ち上げたりしたときにはみんなで飲もうぜ!って行ったりとか、あとはお店で働いてた人が他に移ったりとかするとその店にみんな行こう!という感じで雰囲気もいいし仲良しで、いいなって思います。

こちらのお店にしんのすけくん達も来てくれるし、私達もあちらのお店に行きますし。あとは、静岡に同じベアードビールを出すお店のビールのヨコタに行ったりもしますし、来てくれたりもしますし。そういう意味では楽しいですよね、繋がりもできますし。

ビールのヨコタ http://beer-yokota.com/

静岡市葵区呉服町2-5-22 ソシアルカドデビル2F

次の人が喜んで引き継いでくれるお店にしておきたい

伊藤 これからどうしていきたいとかありますか?もう人生楽しんでいる感じはよくわかるのですが(笑)

大石 そうですねーこういう感じで!もう歳が歳なので「あんまり無茶なことはしない」と思っています。

伊藤 いつまでやろうとか考えていますか?

大石 頑張りたいとは思っていますが、もうそろそろ次にバトンを渡せるようにしないとなーと考えていますね。

鳥居 このお店は残していけたらいいなーと思っているですよね?

大石 そうですね、残せたらいいなと思っています。

鳥居 そうすると、こちら側(お客さん側)に来れますからね(笑)

大石 そうなんですよー!そっち側に戻って飲んだくれたいとか言っちゃって(笑)

現実的な話だと、どうしても誰も引き継ぐ人がいなかったらベアードがタップルームにすると思うんですけど、その時に誰も引き継ぎ手がいないけれどもせっかく定着してきてもったいないなと思ったときに、ベアードが会社として引き受けるよと言えるような状態にはしておきたいと思うんですよ。

とにかく、誰に渡すにしても、「ああ、あそこはちょっとごめん」って言われるようだと困るので、ちゃんと価値があるお店で、ここならやってみたいとか、あそこのお店のお客さんたちはみんな素敵だからやってみたいねとか、誰かが手を上げてくれるような状態にしておきたいなと思っています。

「店長」と呼ばれる親しまれている青年とブルワーになりたい夢を持った青年が働いているお店


インタビューの後に出勤して登場したブルワー志望の店員さん

伊藤 アルバイトの子は学生さんですか?

大石 何人か入れ替わりで入ってもらっているんですけど、一人は「店長」と呼ばれている子がいるんですけど、彼は学生じゃなくて飲食をやろうとしています。もう一人いる男の子はまだ入ったばっかりの磐田出身の子で、「いずれビールを作りたい」という22歳です。あとは学生さんですね。

鳥居 ブルワーになりたいという目標はすごいですね。浜松にもそういう若者がいるんですね。その方は醸造学とか、化学・農業系を学校で学んでいたとか?

大石 ぜんぜん違うらしいんですけど、学生のときにクラフトビールに目覚めたらしいんです。目覚めたからって作りたい!って思うのがすごいなあと思いますよね。でもまだ、ブルワーの厳しさを知らないからそれを知った後にどう考えるかですよね。

やっぱり、ここも樽を扱っているので同じなんですけど、洗浄とか管理がすごい大変なんですよ。とくに醸造所、実際にビールを作っているところなんかは、ほんっっとうにどれだけきれいに作るかっていうのが本当に大変で、ベアードに見学に行くと若い子たちが必死になって掃除しているから「よくやるなあー」と声かけると「ボスに怒られるからねー」という感じで、ブライアンも怒るときにはがーっと怒りますからね。よくしつけられているなあと思います。ビールの品質は洗浄にかかっていると言っても過言じゃないですからね。

伊藤 ここのお店のタップも定期的に洗浄するんですよね。

大石 そうですそうです、ここのラインの洗浄と、タップの部分も分解して丁寧に洗いますね。

鳥居 手間暇がかかる大変な作業ですよね、これが15ラインありますからね。

大石 そうなんですよ、もう本当にかわいがってますね。ブルワリーでかわいがって慈しんで出しているものですから、こっちもぞんざいには扱えないですよね。なので、かわいがって大事にしてお客さんに提供したいと思っていますね。

なのでうちでも定期的に洗浄しています。ベアードがうんと厳しく言っているのは2週間に1回ですね。水だけだと毎日通せと言われています。一般的なところよりも洗浄の頻度はおそらく多いと思います。うちの場合は、あんまり人手がないので15ライン一気にやると大変ってことで、更に小分けして3ラインずつとか時期をずらして洗浄してたりしています。

浜松は楽しく仕事ができる場。大人な方が多くて優しいので、アドバイスは素直に聞こう!

伊藤 これからまちなかでお店をやろうとか何か始めようと思っている方にメッセージを

大石 やー、メッセージですか!そんな大層なこと言えないですよー(笑)

浜松って、けっこう懐の深い方が多いと思います。それで、きちんとしたアドバイスを下さるお客さんが多いと思います。ちょっとこっちができなかったことがあると、ここはこうした方がいいとか言ってくださるお客さんが多くてありがたいアドバイスだと思って、そういうことをちゃんと言ってくださるお客様がいらっしゃるので。

あとは、上手に飲まれる方が多い。お酒を出しているのに、1回も嫌な思いをしたことがないです。6年間やっていて、「本当にもーいやだ!」って思いをしたことはないですね。お客さんに恵まれて本当にいいところだと思います。

伊藤 それは大石さんが達観しているから…というわけではなくてですよね?

大石 そうなのかな(笑) でも、そんなことはないと思います。みなさん大人な飲み方をされる方が多いので、紳士ですね。女性一人で来る方も多いんですが、お店にいるのが私なので全然心配ないというか。それで、カウンターにいる方同士でお友達になったりして一緒に飲んだり。

伊藤 なるほど、大石さんを中心としたコミュニティーができていて、この体験は個店の醍醐味ですね。

大石 なので、浜松で開業すると楽しく仕事ができると思いますよ!

伊藤 最後にこのまちなかで面白いなーと思う方を紹介してください。

大石 シティーライツ、日本酒バーです。すずきともゆきくんといって、日本酒ラブな方です。私が行って「変態系のお酒ください」っていうと「どれくらい変態にしますか、ちょっと変態にしますか?うんと変態にしますか?」って聞いてくれます。もう日本酒の話になると目がハートになって、思う存分お話してくれますよ!

日本酒バー シティライツ https://www.facebook.com/citylights0109/

(おわり)

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今週はここまで!
次回は11/11金曜日に公開予定です。お楽しみに!