【まちなかストーリー】ワイン&キッチンHACHI 橋爪 厚志さん 第2回「起業するまでの話と失敗談」

まちなかで活躍する人にスポットを当てて、そのヒトの街に対する想いや物語を紹介する「まちなかストーリー」。始まりとなる1人目は、ワイン&キッチンHACHI の 橋爪 厚志さん。全4回に分けて、毎週お届けしていきます。 第2回目は、起業前の過去のお話を中心に「起業するまでの橋爪さんの歩みや経験談」を振り返ってお話していただきました。
 

人物紹介

橋爪 厚志さん

橋爪 厚志さん
大学進学を機に上京し、学生時代のアルバイトを通じて飲食業に興味を持ち、飲食業に就職。東京でお店を出し共同オーナーに。その後浜松に戻り、2013年9月に「ワイン&キッチン HACHI」を中区鍛冶町にオープンし、2016年4月には別業態の「浜松太陽食堂」をオープン。浜松の飲食業界を盛り上げる若き実力派オーナーさん。ワインとサッカーと日帰り温泉が好き。

上京後のアルバイトから飲食業を志し、東京で独立

伊藤 もともと東京に出て飲食業を志していたんですか?

橋爪 いやー、ぜんぜん関係なかったです。とりあえず大学行くってことで東京の大学に通いまして。飲食と出会ったのも、学生はやっぱりバイトとかありますよね。

その経験で飲食のバイトを続けていくうちに、どっぷりはまってしまって。就職活動の時には飲食業だけに絞って、行きたい会社もいくつかに絞っていたので4月にはもう就活終わっていましたね。で、飲食に進むと決めて。

伊藤 そのときに独立するというビジョンはあったんですか?卒業して五年くらいとか

橋爪 そうですね、30までには独立したいと思っていて。6年前(2010年)に共同経営で東京で独立してるんですよ。

それで、そのお店を3年間やってたんですが、浜松に帰ってくるきっかけってのがあって。僕長男なんですが、父親の具合が悪くなって、帰ろうって戻ってきたのがきっかけなんです。それまでは向こうでお店を出してて戻ってくるつもりがなかったので。共同経営してたお店は一緒にやってた人に譲って、こっちに戻ってきましたね。

伊藤 何系のお店をやられてたんです?

橋爪 そこは、野菜を中心として野菜を売りにした居酒屋ですね。女性受けのするお店で。そこは練馬っていう、あのいちおう23区ですけどちょっと外れの方でやってました。

なので、東京にいたときに起業はしてましたが、共同経営なので一人ではなかったです。

伊藤 共同経営ってどうなんですかね。ざっくり言うと、どうでした?

橋爪 よく、やめろとか言われますね。なんだかんだやっぱり揉めてけんかするとか言われますね。でも僕の場合は全然けんかもなかったですね。

伊藤 それぞれ役割が違った?

橋爪 そうなんです、僕料理人じゃないんです。もう一人が料理人で、僕はフロアと仕入れとサービス全般で分担してたので。なので、そこの会社として浜松に出すとかも考えていたんですけど、僕が戻ってくることになったので、東京の店は任せてこっちに戻ってきましたね。

学生時代とはがらっと変わっていたまちなかの雰囲気

伊藤 橋爪さんが高校の頃までいらっしゃったまちなかの雰囲気とは変わってましたか

橋爪 衝撃的なくらいまちなかの雰囲気は変わりましたよ。私は西ヶ崎の方が地元で、当時はそこにずっと住んでいたので、まちなかエリアというのはすごくすごく栄えているように見えて、モール街もマックがあってイトーヨーカドーがあって、僕の小さいころなんかだと西武があって…ザザはできてたかなぁ?

伊藤 西武がなくなってからでしたよね

橋爪 なので松菱もまだありましたし、有楽街周辺も物販のお店が多くてここまでお酒が飲めるお店ばかりじゃなかったですよね。

なので、このエリア(有楽街・鍛冶町周辺)っていうのは本当に人が集まっている浜松の中心というイメージがすごくあったんですけど…10数年離れている間に郊外にショッピングモールが出来たりいろんなことがあって、街中から郊外に行く流れが強くなったのかなと思います。けれども、やっぱり浜松として発展していく、盛り上がっていくには、やはりここが盛り上がらないと僕は意味ないんじゃないかなと思うんですよね。

伊藤 そうですよね、ここは浜松の玄関口ですから

橋爪 そうなんですよね。ぼくの友達が県外から遊びに来ることがあった時に「浜松って意外に人いないんだねー!」って言われるのがすごく多くて。昔はいたんだけどなぁと思いながら。

実際浜松の人口としては、政令指定都市にもなっているので数としては多いはずなんですけど、ただ、この一番盛り上がるはずであろう中心に人がいないってのが現状なんだろうなぁと思いますね。

伊藤 そうですよねぇ

橋爪 もっと人いた気がしたんですけどね、昔は(笑)

伊藤 やっぱりお休みの日とか、もっと人がいて

橋爪 いましたいました!

伊藤 で、ぶらぶら歩いても、見て歩けるお店があったじゃないですか

橋爪 そうそう、そういうのが、僕の中のまちなかのイメージだったんですよ

伊藤 14年くらい離れて戻ってきたら、カラオケ屋と飲み屋くらいしかなくなってて

橋爪 そうですよね、なので松菱が潰れるなんて思ってなかったですからねぇ。昔は郊外にイオンはなかったので、何か買い物するとなったらみんなここに来ていたんです。気づいたらなんでかこんなに(笑)…まぁ悲しいですよね。

まちなか1等地での開店「やるならでっかく!」

伊藤 東京で飲食店に勤められてて、戻ってきて起業・独立するときに、HACHIさんの店舗は1等地でスペースも広いですよね。けっこう大勝負だったのでは?

橋爪 (食い気味で)もう、やるならでっかくですよ!

伊藤 やっぱり、最初の1店舗目にしてはすごい大きいですよね

橋爪 やっぱり、東京から帰ってきて、繁華街で家賃を聞いて、まぁ僕の中ではそんなに高いイメージではなかったんですよ、聞いた時点では。”ただ”、今3年たって思いますけど、んー、高いですね(笑)

伊藤 (笑)

鳥居 やはり高いですか(笑)

橋爪 やっぱり浜松の平日の人の流れを考えると、割高なのかなーと。東京の話を出したのはあれですけど、浜松の1番の1等地の繁華街の1階の路面でこの価格だったら安いなと、東京の感覚で。ただ3年たつと、あー高いなやっぱりって思います。なんだかんだで3年たちましたけどね。

起業して3年、今もまだ安心せず試行錯誤し続ける

伊藤 起業から3年たって今までで何が一番大変でした?

橋爪 今まで・・・というより未だに試行錯誤はずっと続けてはいます。ここでゴールというのはないので、常に何か新しくするにしても、まあこれで大丈夫だろうと思って始めてもやってるうちに、何か足りないってなるので結局終わりなく、安心したことがないですね。常に不安にも駆られます、一人で自分で立ち上げたのもありますし。

伊藤 起業はお一人でですよね?

橋爪 そうです、一人ですね。なので、給料もらってる頃ってすごく楽だったんだなって思いますね。ただ、でもそれだけじゃない楽しみだったり喜びだったりを感じられるので、そういうのがなかったらたぶん、続けられないです。

本当に大変だったと言うことであれば、平日の人の集客であったり、他の店との違いをつけるとか、そこが一番力を使いましたね。

伊藤 あとは従業員の教育とかもそうですよね

橋爪 そうなんですよね。何が一番大事かって考えると、お店とかのハード面も大事なんですが、結局は”人”なんだなと。従業員の確保もそうですしね。

採用が難しい飲食業、自分の店を働きやすい環境に変える

鳥居 飲食業は特に、働き手の流動性が高い業種ですよね。

橋爪 飲食業って、求人誌を見ても常に出てるような職種なんですよね。なんでかというと、この業種は「きつい、きたない、給与も低い」ってイメージがすごくあると思っていて、僕も正直に言うと朝から晩までお店にいますし、立ちっぱなしですし、お皿とかも洗いますし。僕は飲食好きだから当たり前のようにやりますけど、今の子達はあんまり(こういう業態を)好まないんでしょうね。

求人の募集かけても1人を採用するのにすごく時間もお金もかかりますので、ずっと長く働いてもらう環境を作るってことが僕の役目だと思います。結局雇ってもすぐやめられちゃうとお互い不幸ですし、またお金と時間がかかりますからね。

やっぱり、お店がどんどん発展していくには、従業員が働きやすい環境だったりを自分が作らなきゃいけないって思いますね。

僕が当時就職しはじめの頃とか、パワハラもあるし(笑)残業代カットされるだとか、そういうのが当たり前に行われていた時代なんですよ。

僕はそれ以上に、飲食業、とくに人と携わることが好きだったので続けられましたけど、結局僕も3,4年くらいの入社の頃くらいから「法」を味方につけて訴えたり。

僕らが育った環境ってのはそれはそれで従業員には関係のないことなので、今の子達に合うやり方を考えていかなければいけないし、今の子達の考えに僕たちがもっと寄っていかないと。僕らが受けてきたことと同じことをやったとしても続かないと言うことですよね。

今までの「やっちゃったなー」な失敗談、根掘り葉掘り聞いてみると…

伊藤 今まで勤め人の頃も含めて「やっちゃったなー」という失敗ってありますか?

橋爪 失敗ですかー、常にやっちゃったなってことはありますけどでかいのですかー

伊藤 たとえば仕入れの数を0を1個間違えちゃったとか

橋爪 あー(笑) それもありますし、あとは飲食業なので料理を持って行くときにお客様にかけちゃうという。

伊藤&鳥居 おー・・・

橋爪 かかっちゃったことはあります。本当にそのときは血の気が引きましたね。もう、取り返しが付かないという。

伊藤 もう戻せないですからね、そこから対応していくしかないですし

橋爪 最近はないですけど昔は私がやっちゃうときもありますし、アルバイトの方がやっちゃうこともありますし。その場面はいろいろあるんですけど。

あとはアルバイト時代に、これもかけちゃった話なんですが、女性のお客様のブランド品にこぼしてしまった失敗とかもありましたね。会社にきちんと報告して、その後お客様の持ち物は会社が弁償してくれて事なきを得たのですが。

こういう失敗は、チェーン店の時に多かったですね。個人になってからは気が張っているのかぐっと少ないです。

自分でやってからも対応の仕方がわかってきたので、まぁ勉強したというか。なので、なにかあったとしても大概動揺しないようにはなりましたね。

鳥居 よほどのことでなければ、一通りなんとかなるという感覚ですよね

橋爪 そうですね、もうだいたいのことは経験してきたと思うので

(おまけ)まちなかの店舗のトイレ事情

ーー失敗談を聞いていたときに、街中の店舗のトイレ事情の話になったので少しだけ紹介します。この体験談はまちなかの飲食店ならではかもしれませんねー

橋爪 あーあと、このお店(HACHI)で難癖つけられたことで一個あったのがー、こんな話ばっかりしちゃってあれですけど(笑)

この場所だとトイレ貸してくださいってことがあるんですよ。昔はトイレを貸していたことがあって、今はもう貸してないんですけど。だいたいそういう人って、限界で来る人が多くて。

伊藤 あー、なるほど(笑)無理だからもうやむを得ず声をかけると。

橋爪 普通に用を足すならいいんですけど、吐く人とかいるんですよ。それで、結局片付けるのはこっちじゃないですか。これもう、貸さなくていいよね、ってなって。うちは別にお店だから、うちをご利用いただいてる人のためのトイレなんで。もうそういうのは一切やめてて。で、あるとき勝手に入ってきた人がいて。

伊藤 いるんですかそんな人(笑)

橋爪 あの、お客様ですか?何名様ですか?っていっても無視で。で、帰ろうとしたときにさすがにね、「そういうのどうなんですか?」って話をしたときに難癖つけてこられまして・・・

鳥居 お店側はトイレを貸してあげたというのに!

橋爪 それでまぁ、向こうも酔っ払ってるじゃないですか。お、これはひと事件起きるかなという感じで。何も起きないんですけど(笑)基本的には僕からは手を出さないので、お店の立場もありますから。これ、2回ぐらいありましたかね。勝手に使っていく人いるんですよ。

伊藤 いやいや、いるんですねーそんな人!

橋爪 おかしいんじゃないか!と思うでしょ

鳥居 切羽詰まってたりするなら、あとから「さっきはすいません!急いででー」って言えば時間との勝負だしね、仕方ないですよねと思いますけど…

橋爪 でも当然かのように使っていく不思議な人もいて、で「何言ってんだてめぇ!」みたいに言われて逆ギレされると弱っちゃいますよね。ちょっとそれはどうなのかなと(笑)

今回はここまで! 次回は「将来の出店話と浜松の飲食店事情」について聞いていきましょうー! 公開予定日は7/29です。お楽しみに!